人生において、「お気に入りの一作」に出会うことは稀だと思います。こういった作品は、所謂「神ゲー」と言われるのですが、実は私、この「神ゲー」というスラングが少しだけ苦手でして。
何故かというと、「神ゲー」と一度で称してしまった場合、その後にそれを上回る完成度の作品に出会っても、「神ゲー」としか評せなくなってしまうからです。より自分の中での傑作が生まれたときに「神ゲー中の神ゲー」などと呼び始めると、いよいよもって何を伝えたいのか訳がわからなくなってしまう気がするのです。
そんな私が、過去も未来も見据えたとしても個人的な「神ゲー」と称したい一作が、『ゼルダの伝説 BREATH OF THE WILD (ブレス オブ ザ ワイルド)』 (以下、「ブレワイ」と略す) です。
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- 発売日: 2017/03/02
- メディア: Software Download
「何でも出来てしまう」という衝撃
正直言って、私も最初はこの作品への周囲の評価に懐疑的でした。名作と言われると、「それは周囲の声に乗っかってるだけじゃないのぉ〜〜〜〜????」と、すぐ疑う天邪鬼なのです。性格がひねくれすぎている。ですが、ゲーム序盤で、丘の上から世界を見下ろすシーンでは誇張抜きに、思わず声を挙げてしまいました。部屋で一人ゲームしてるだけなのに。
まるで実際に高い丘に駆け上がって見下ろしたときのような息を呑む風景。ゲームの中ではありますが、自然がそこに息づいているように感じる世界。そして、そこを自由に駆け回れるというワクワクが溢れてきてしまったのです。
次に驚いたのは、本作では思ったことを自由に出来てしまうことです。木を切る、リンゴをジャンプで採る、木や崖を登る、湖を泳ぐ、魚を手で取る、敵を棒で殴る、リンゴを焼く、木を燃やす、木こりになる、老人を棒で殴る、出来るだけ引っかかりそうな場所を細かく歩く、目に付いたものを棒で殴るなど……。
何でも出来てしまう!
これは久しぶりにゲームをしていて震えました。絶対に出来ないだろうと思っていたことでも、大抵は出来てしまうのです。強い敵を長距離からチマチマ狙撃したり、城の裏側から敵地に忍び込んだりも許される。そんなオープンワールドならではの面白さに、行けない地形が殆ど無いという移動の自由さが加わり、今までに無い面白さ、新鮮さが生まれています。
「生き様」が見えてくる魅力的なキャラクター
ゼルダの伝説シリーズは、『時のオカリナ』、『ムジュラの伝説』、『風のタクト』、『4つの剣+』、「トワイライトプリンセス」 と割とこなしているのでのすが、今作はオープンワールドというゲーム性だけではなく、物語の面でも少シリーズ内では異質であるように感じます。もちろん、良い意味で。
『ゼルダの伝説』シリーズって、総じてメインストーリーやサブイベントで生活が垣間見えることはあっても、あんまりリンクやその周辺のキャラクターたちの生活ってあまり見せてないイメージがあったんですよね。プレイヤーの想像できる余地は残して、残りは各々で補完する形というか。恐らく、メインストーリーの邪魔にならないように余計な部分は排した結果だとは思うのですが (他にもサブイベントやコレクション要素が多いゲームなので)。
ところが本作では、そんな登場人物たちの生きる姿、感情の機微が繊細に描かれていることも魅力の一つです。例えば、作中において「四英傑」と呼ばれる者たちが出てきます。
ゴロン族の族長 ダルケル
ゾーラ族の王女 ミファー
リト族最強の戦士 リーバル
ゲルド族の女帝 ウルボザ
という4人の彼ら、彼女らがとても魅力的で、それぞれが主人公でゲームを作れちゃうくらいに濃い性格をしています (後述しますが、実際に彼らのことをより深く知れる作品も出ています)。
4人とも歴代のメインキャラクターにも引けを取らないほどインパクトがあって、愉快で、いじらしくて、頼もしいキャラクターたちです。彼ら、彼女らのことは作中で断片的に明かされていくのですが、その一つひとつにそれぞれの「生き様」が明確に示されています。
また、本作のヒロインである「ゼルダ姫」も前作までとは少し違い、「努力が報われない者」としての描写が多くなされています。これもまた良いんです。今までのような囚われのヒロインでも、世界の命運を握った強き女性でもなく、周囲の期待に必死で応えようと努力するも才能が開花しないことに悩み苦しむ一人の女性。そんな等身大の人間像であるため、より感情移入しやすくなっています。
本作は、全体的に人間味が強いんですよ。それぞれのキャラクターに生活があって、友や家族がいて、仲間がいて、喜びや悩みがあって。そして、その全てを背負って戦っている。
特に「ゼルダ姫とリンク」という二人の関わりに関しては、プレイヤーが能動的に探す必要があり、実は無視してエンディングを迎えることも可能です。それでも、自分の手で探し、その目で見て記憶を取り戻すことによって、より世界へと没入していくことができるのです。
そして最後は全ての記憶を得て、このハイラルに存在する多くの「生き様」を背負って「厄災」を討伐する。そのカタルシスが凄まじい。これらが、本作の魅力ともいえると思います。
シリーズ屈指の難しさと、試行錯誤の楽しさ
ここまでひたすら褒めていたのですが、個人的に良くもあり悪くもあった点についても書いておきます。
いや、マジで難しいんですよこのゲーム。
とあるボス戦なんて、死にすぎて「あれ、いつから『ダークソウル』やり始めたっけ?」って思いました。 個人的にはやり甲斐があって楽しかったのですが、難しいので「誰にでも手放しで楽しんで欲しい!」とはいいきれない部分もあります。ただ、工夫次第で勝ち筋は見いだせるので、何度も試行錯誤することが大事なゲームです。それも本作の醍醐味ですね。
また、書物を読んでくる系の一部サブイベントでのアイテムが見つけにくかったのは気になりました。一見すると、周囲の風景やオブジェクトに紛れているので、割と見逃しやすいんですよね (特にガノン城では風景の本も多かった)。あとは、武器、弓、盾ポーチを増やすまでに時間がかかってしまうので、序盤はお気に入りの装備を保存しにくかったのも少しだけ気になりました。
ですが、そんなやりくりや、節約などの作業すらも楽しく出来るゲームではありますし、無理にクリアを目指さずとも世界を駆けずり回るだけでも価値があるくらい広くて美しいゲームです。
「何かを好きと語ること」と続編について
多分、私よりもこのゲームをやり込んでる人は沢山いると思います。だって私は、未知のバグ技を見つけてもいないし、祠もコンプしていない。マスターモード (高難易度で初めからプレイできるモード) もクリアしてなくて、なんなら世界中を踏破してないだろうし、『ゼルダの伝説』シリーズを全てクリアしてるわけでも無いです。
でも、例え私よりもやり込んでいる人がいたとしても関係ないのです。私の人生の中で、このゲームは最高だ!! と思えたならばそれが最高なんですよ。「やり込んでないのに、好きって言って良いのかな?」と思う人もいるかもしれません (私だけかもしれません) が、好きならそれで良いのです! 少なからず、私の人生史上でも屈指の名作「神ゲー」だとお伝えしたいです。
それと! このブレワイの100年前の世界を楽しむことが出来る『ゼルダ無双 厄災の黙示録』も発売しています。こちらでは100年前の四英傑や、ハイラル王など知られざる様々な物語が語られているので、ブレワイをクリアした方は是非どうぞ!『ゼルダ無双 厄災の黙示録』より先にブレワイをプレイすることをオススメします!
また、現在『ブレワイ2』の制作が決定しているので、そちらも気長に待ちたいですね!