普段の生活を営んでいると、不意に過去の悲しい記憶が蘇ることがある。流石に子供の頃の出来事なので落ち込むということは無いのだが、何だか複雑な気分になるものだ。
少し昔の話をしよう。私には未だに忘れることの出来ない、ほろ苦い『ロックマンエグゼ2』の思い出がある。それはまだ私が小学生だった頃の真夏である。まだまだクソガキ真っ盛りであった私たちは、友人たちに誘われて川の浅瀬でザリガニを取りに行っていた。
川辺での遊びは楽しいもので、夢中になってザリガニを探していた。川底の石を覗き、ときには藻にまみれた場所を水に濡れながら探し回っていたことを覚えている。ここまでは素晴らしい夏の思い出であった。
問題はその後だ。川辺にはいつだって石の足場というものが続いている。点々と続く石をその頃の私たちはゲームのギミックみたいに感じたのだろう。一人が石をテンポ良く飛び乗っていき、川の向こう側まで辿り着く。つられるように、他の友人も足場に軽々と乗っていく。私も負けじと足場へ跳んだのだ。
跳ぶ直前には不安もあった。運動神経は並み以下の人間がこんな不安定な石の足場を越せるのか、しかし、1つ目、2つ目を踏み越えたときには始めて味わう高揚感があった。「自分でもこの川辺を渡りきれるかも」という期待を胸に、大きく跳躍した直後である。
視点は反転し、一瞬にして私は浅い川の底に背を預けていた。唖然呆然。どうやら濡れた石に足を滑らせ、背中から川に落っこちてしまったようであった。頭を打ち付けたりしなかったことは今思えば不幸中の幸いであったが、そのときは、そんなことよりも圧倒的な敗北感で胸がいっぱいだった。
そこから先はあまり覚えていない。水浸しになった私を見て気まずくなった友人たちは、ザリガニ取りを中止して川辺でゲームを勤しんでいた記憶がある。持ち物はいずれも川辺に置いておいたのでゲームがぶっ壊れたりはしなかったのだが、私の心はブルー一色であった。
そのため夕暮れ近くまで、友人のプレイする『ロックマンエグゼ2』を見ていたことだけを覚えている。周りの皆がそれぞれ『ロックマンエグゼ』シリーズを持ち込んで楽しむ中、当時該当シリーズを1本も持っていなかった私に出来たことは横から眺めるくらいのことだけだった。
ラスボス戦で苦戦する友人に「プリズムコンボ」を使用することを提案したところ、凄まじい火力でラスボスが消し炭になったことも覚えている。そりゃあ大会で禁止になるよね……。
ザリガニは捕れず、服はびしゃびしゃ、『ロックマンエグゼ』シリーズも持っていない私は鬱屈とした感情を心に秘めたままその日を終えた。それ以来『ロックマンエグゼ2』を見ると、あの日の溢れ出る劣等感を必死で抑えてびしょ濡れのまま自転車を漕いだ少年時代を思い出す。本シリーズはその後も何やかんやで購入機会に恵まれず、結局しっかりと自分でプレイしたのは『ロックマンエグゼ4 レッドサン』からであった。こちらに関しては友人と発売日にゲーム屋まで買いに行った作品なので、比較的明るい記憶である。
ロックマン エグゼ 4 トーナメント ブルームーン [WiiUで遊べるゲームボーイアドバンスソフト][オンラインコード]
- 発売日: 2015/04/09
- メディア: Software Download
ということで、『ロックマンエグゼ2』にまつわるちょっと苦々しい思い出でした。ゲームとしては、初代『ロックマンエグゼ』よりも遊びやすくなっていて、スタイルチェンジなどのシステムが好きでした。とはいえ、私は友人が楽しそうに遊ぶ姿を横から見ているだけでしたが……。
本シリーズはナビチップを初めとした「暗転」が発生するチップを駆使した戦略とかも楽しかったですよね。ナビ戦では相手の行動判断に使えますし、対人戦では後出しの割り込みが出来るので出し得技ともいえないのが良いバランスでした。
特定のチップを揃えることで発動する「プログラム・アドバンス」(以下、「P.A」と略す) なんかも印象的です。基本的にP.Aはチップが序盤でも揃う「ドリームソード」などを使うことが多いのですが、対戦環境では「ポイズン・ファラオ」とかいう設置しただけで爆速でダメージを与え続けるとんでもない兵器もあったりしました。シリーズで登場したP.Aの中では、ロックマンとブルースの連携技を繰り出す「ダブルヒーロー」や、各スタイルで攻撃する「マスタースタイル」が印象深いですね。自分が一番使ったP.Aは間違いなく『ボクらの太陽』とのコラボ技である「パイルドライバー」ですが。
本シリーズは『ロックマンエグゼ6 電脳獣 グレイガ/ファルザー』で完結していますので、まだプレイしたことのない人には是非一度手に取って頂きたい名作です。ただ、現状だと、GBAの中古ソフトか、Wii Uのバーチャルコンソールでしかプレイできないのが勿体ないですよね。
シリーズには後半戦から本格的に参入した新参者でしたが、本当に思い出深い作品なのでNintendo Switchあたりで移植して欲しいのですが、厳しいんですかね。『ロックマン ゼロ』シリーズが『ロックマン ゼロ&ゼクス ダブルヒーローコレクション』として移植されているので、そろそろ移植対象になって良いと思うのですが……。
そんな『ロックマンエグゼ』シリーズも今年で20周年!! 近未来の世界観とトレーディングカード要素、プレイヤーによって異なる戦略と、ストーリー中でやや多めのおつかい要素など思い出いっぱいの名作です。沢山の思い出をありがとう! 移植はいつまでも待っているからね!!